今回は、表参道の「立体メイズ(maze)」です。日本語で「迷路」の意味なんですけどね。始めて行くと必ず中で迷います。あれ、どっちだっけ、何、ここに出てきちゃうの。あのケーキ屋さんにはどう行けばいいんだ、と迷っちゃう建物です。
ダントツ人気の建築家・安藤忠雄の設計による「コレッツィオーネ」です。1989年竣工ですから、すでに築19年ですね。ケーキ屋さんや家具屋さん、レンタル・ルームや運動施設なんかが入る商業施設です。表参道の交差点から、金魚鉢の「プラダ・ビル」を通り過ぎてズーと行くと、右側にフロム・ファースト・ビルがありますが、その先のお隣にあります。個性的なビルですので、直ぐに判ります。
このビルの見所は、外壁の仕上げとしての「コンクリート打ち放し」です。素材の美しさを表現しようとする日本人の美意識にマッチする仕上げで、諸外国ではあまり使われない仕上げではあります。日本人は、木材の使い方にしても、日本間を見れば明らかなように、木肌を見せたがるでしょ。柱はカンナがけしただけの素地のままを由とするし、障子にペンキを塗る人は先ずいませんよね。しかし、欧米人は木をそのまま使う事は少ないんです。殆どの場合ペンキを塗って仕上げますもん。
ペンキも塗らず、仕上げしてないんだから安いんだろう、との誤解が多いのも打ち放し仕上げですが、決してそうではなく、金額的には高い仕上げです。先ずコンクリートの駆体そのまんまの仕上げですから、駆体の劣化を防ぐ為に片面で30㎜の打ち増しが必要になります。構造的に180㎜でいい壁厚が、裏表で60㎜の打ち増しが必要で240㎜になっちゃいます。
コンクリートを打設するときの型枠も新品のモノが要求されます。まっさらの合板にそれなりのペイントを施したモノ使います。型枠ですから、コンクリートが固まったら取り外して使い回すのが普通ですが、打ち放しの場合には使い回された型枠は使いません。常に新品の合板を使います。
加えて、コンクリートの打設に凄い神経を使うんです。ジャンカと言われる豆板状にならないようにするのは無論、コールド・ジョイントと呼ばれる打ちついで行く過程でどうしてもできてしまう継ぎ目を出さないように打ってゆかなければならないのですが、これが非常に難しいんです。実はよく見ると「コレッツィオーネ」の外壁にもこのコールド・ジョイントの線が出てます。中の柱には、かなり雑な補修の跡さえあります。型枠を外してみて、綺麗に打ててない場合には、プロの補修屋さんが来て補修し失敗をパーフェクトにごまかしてくれるんですが、2,3年も経つとボロはボロとして出てきちゃうのが打ち放しです。
表面には、何も仕上げをしてないわけではなく「撥水材」と言われる透明な塗料が塗布されています。これを塗っておかないと雨水などの水分を吸収して問題を起こします。コンクリートには防水性はありませんから、どんどん水を吸収します。吸収したままにしておくとカビや苔なんかが生えてきますでしょ。黒ずんでも来るしね。打ち放しの撥水材の寿命は5年ですから5年毎に塗り重ねが必要となります。塗らないで汚くなったコンクリートの外壁は世の中に沢山ありますでしょ、見たことあると思いますけど。指にツバつけて打ち放しの壁に触ると濡れ色が付かないのは撥水材が機能している証拠です。打ち放しの壁を見たら、やってみて下さい。濡れ色が出てくるようなコンクリートは、打ち放しではなく「やりっ放し」か、メンテナンス不十分な建物で、数年のウチに見るも無惨な外壁となります。
「コレッツィオーネ」の打ち放しは、かなり綺麗に仕上がっています。安藤忠雄という建築家は、コンクリートの打ち放し仕上げで幾何学的なフォルムを創り出す天才です。その類い希なる感性で世界的な評価を得たのです。美しくない、はずは、ないのがこの「コレッツィオーネ」です。ただし、この安藤忠雄という方は大学での教育は受けていないし、設計事務所で所員として修業したこともないと言われてますから、たぶん一級建築士は持ってないと思います。だって一級の受験資格がないですもん。建築家は一級建築士を持ってなくてもいいんです。事務所に一級を持つ管理建築士がいれば、その人の名前で確認申請出せます。えびチャンだって今日から建築家になれます。えびチャン建築設計事務所だって成立します。私が管理建築士になってもイイですよ。
だからと言うわけではないのでしょうが、業界的には多くの非難も受けている方です。雨の日に傘を差さないとトイレに行けない住宅や、近所に銭湯があるので浴室は作らなかった、とか、法律で定められた消防設備の設置を拒否したり、バリアフリーを無視した施設では「他の人が手助けしてやればいい」と取り合わなかったりとか、屋外に洗濯物を干すなとか、利用者の使い勝手を無視する身勝手は枚挙にいとまがないのも事実のようです。
まー世界的な巨匠の多くは、多かれ少なかれ批判の対象にはなってますので、別に驚くことではないんですけどね。日本建築学会賞を始め多くの賞を獲得してるし、なんつったて東京大学の教授(特別栄誉教授)ですからね。エール大学、コロンビア大学、ハーバード大学などの客員教授の経験もありますし、社会的評価はスゲー高い人ではあるんです。最近では、副都心線の渋谷駅の設計なんかして、話題を撒いてます。
設計者・安藤忠雄の事を考えながら、20年近く経っても美しさを保っている打ち放し「立体メイズ」、迷路建築を楽しむのも一興です。構造は鉄筋コンクリート(ラーメン構造)です。階数は地下1階、地上5階、だと思います。確認できませんでした、ゴメンナサイ。安藤忠雄建築研究所のホームページはないみたいですね。何でだろう。
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