3/31/2010

ニール・バレット ZAHA Hadid


 ザハ・ハディド(ZAHA Hadid)って名前、ご存じ? じゃーニール・バレットは? ザハは超過激な女性建築家。ニール・バレットは、男性ファッションの高給ブランドです。2者のコラボが表参道にありました。

  今回は、インテリアのご紹介です。建築がダメだってことじゃなくて、その中の1階と2階、特に1階部分に注目です。ザハ・ハディドZAHA Hadidって名前、ご存じかしら。建築の設計関係にいる人や、設計に興味のある学生さんの間では、少々知れてる人です。その人がやったインテリアが、なんと、表参道に、あったんです。場所は表参道の交差点をプラダの方に向かって、プラダ・ビルのちょっと手前の路地を左に入ったところの左側です。他にお店はありませんので普通は曲がるところではない地味な路地です。

 ニール・バレットって言うファッション・ブランドは有名なの? 私は知らなかったんですけど、そこのショールームです。男性モノが中心のようですが、私はユニクロのファッションで、チャリンコ通勤してるので、当然、存じ上げません。「チェーンの油汚れがチャーミング」なんて言われることはあっても「格好いいニール・バレット着てるジャン」なんて言われたことないですもん。

 そのニール・バレットのショールームが、ザハ・ハディドの作です。ザハは、イラクに生まれたハチャメチャな女性で、現在は英国を拠点に世界を股にかけて活躍してるオバサンです。迫力の顔立ちで、私と同い年。

 「もう、いい加減にしてくれないかナー」という印象の建築家で、好き勝手にやっちゃってる人ではあります。建築を勉強したのはロンドンの名門AAスクール(Architectural Association School of Architecture)。2004年に女性として初めて、建築界のノーベル賞とも言われているプリツカー賞も受けてます。自身のホームページを見ても判るように、完全な芸術家肌の人です。かなり扱いにくそうで、その分「やな奴」のレッテルが貼られてます。

 彼女のデザインは「ロシア構成主義の建築や美術の強い影響のもとにあり、コンセプチュアルで空想的なものを現実空間に出現させることで利用者に驚きを与えている」とウィキペディア(Wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/ザハ・ハディッド)にあるように、長いこと建築家と言うより学術的な建築思想家だったような人ですね。

 実際の建築作品ではなく、建築思想の提唱者として過激なコンセプトで知られていた人です。まー建築家にも色々いるわけで、私は嫌いじゃないですよ、こういう建築は。過激でいいっすが、実現できないような計画の図面を描いて、自分の論を押し通す凄いオバサンなわけで、お友達にはなりたくないような女性ではあります。

 で、「ニール・バレット青山店」がオープンしたのは、昨年(2008年)の9月。私には何の連絡もなかった、のは仕方ない事として、ここで、もう一点注目すべきは、このショップのプロジェクト・マネージメントをした会社です。建築家とクライアントを結びつけた人がいるんです。

 日本に、進出しようとしている欧米のファッション・ブランドが日本でショップを構えるにあたって各種のサポートを必要とするわけで、そのサポート・サービスをインテリア・デザインと共に提供している会社です。一般の人との接点は殆どないわけで知名度は、業界内部はともかくとして、低いんですが、あるんですよ、こういう会社。代表的なところとしては渋谷の交差点のTSUTAYAが入る、大きなモニターのあるビルをプロデュースした浜野総合研究所の浜野安宏が有名なんですけどね。

 そのような建築やインテリアのデザインを足がかりにビジネスを展開している会社があるんですよ。今回ここでは「ギャルド」という会社が入ってます。詳しく知るところではありませんが、ニール・バレットをザハとともに表参道に持ってきた仕掛け人ではあります。原宿や銀座の「HM」のお店なんかも手がける、建築プロデュースの会社です。建築やインテリアなどの仕事に就きたい人には参考になるかも知れないので言及しておきました。


必ずこちらもお読み下さい。写真はまとめてここにあります。

この原稿は、下記の人気サイト「おもてサンド」の「たてもの観察ゼミ」に紹介されたモノで、私が写真を撮り、文章を書いたモノをベースにしています。



ヨックモック本社ビル 藤本昌也


 今回は、私一押しの喫茶空間、ヨックモックです。表参道界隈で最も品のある、落ち着いたお店ですね。私のようなセレブリティー(?)御用達のお店でございます。オープンしてから30年以上ですからね。

 竣工は1978年4月。設計したのは藤本昌也率いる「現代計画研究所」と竣工10年後(1988年)に改装を担当した今村雅樹です。2人とも知る人ぞ知る建築家で、藤本昌也は日本建築士会連合会の会長でもあります。今村雅樹は「今村雅樹アーキテクツ」を主宰しています。二人とも各種の受賞歴があり、このヨックモックの建物で、藤本氏は1980年「建設業協会賞」を、今村氏は1993年「商環境デザイン賞」をそれぞれ受賞されています。このヨックモック本社ビルは、それだけ注目を浴びたビルなんです。

 ヨックモックは子供の頃から親しんでいる洋菓子屋さんで、お土産などで頂いたモノがチョッと気取ったオヤツに出てきたりしてました。泉屋のクッキーも美味しいのですが、ヨックモックのクッキーはソフトな歯ごたえで泉屋と一線を画しています。アメリカ人の友人の中に、このヨックモックに目がない奴がいます。そりゃそうです、アメリカ人にはこれだけ繊細なクッキーは作れない、ような気がします。

 本店の建物は、中庭を囲むようにしてシンメトリックに建物が建っています。鉄筋コンクリート造、地上3階、地下1階建てで、特注の青と白のタイルが外壁を覆っています。クッキーと同じように繊細な建物ではあるのですが、なんでファサード側に青いタイルで、中庭側には白のタイルなんだろう、との不思議を未だに持ち続けています。表参道の交差点からプラダ・ビルを超えて直ぐの所、右側に建ってます。深いブルーのタイルが目に入りますが、そんなに目立つビルではないので、通り過ぎちゃうかも。

 建蔽率60%の敷地にあって、58.7%の建築面積で、空いた空間の殆どをオープン・テラスにしてあります。表参道界隈で、このような「庭」を持つ建物は珍しいですね。都内でもそんなにない敷地構成と言えます。解放された外部テラスのテーブル席に座ると、歩道側にチョッとだけ開いてはいますが、ほぼ4方を建物に囲まれ、通りの喧噪から隔離され、落ち着いた静けささえ感じることができます。中央付近には1本の高木が立ち、緑も豊富に配置され、肌に馴染む空気がやさしい所です。春秋のデートには最適。

 こんな環境の中で、お茶や食事ができる所はそんなにありません。寒い日や暑い日、雨や風の強い日には利用価値のない空間です。そんなお¥にならない空間を作り出すためには、建主さんの一大英断英断が必要で、美味しいクッキーを世に送り続けるヨックモックさんのその辺の姿勢に脱帽なのです。私は、泉屋のクッキーも、実は好きなのですが、ヨックモックさんの方を高く評価したい理由がその辺にあります。

 地下や23階の計画がどうなっているのか判りませんが、多分、そんなに使い勝手は良くないと思います。執務スペースは全部狭いだろうし、ショップとダイニングのスペースが分断されてます。厨房への車専用アプローチも見あたりませんもんね。そして、この建物の唯一の欠点は、雨に対する配慮が欠けているんです。そう、傘を差すスペースがないんです。中庭に通じる出入り口のドアーは、雨が降るとドアの内側まで濡れちゃう筈です。一部のアルミサッシの窓もそうなんですが、従業員の方の建物に対するクレームは、だいたい想像できますね。「社長、もう築30年過ぎてますし、建て替えませんか」なんて言われてんじゃないかしら。

 この建物は訪れるお客様中心に計画されていて、お客として利用するときには、本当に気持ちよく使えます。内部の喫茶スペースにしても、外の歩道を歩く人からは、中のお客さんのテーブルの上は、全く見えないように計画されてますし、お客さんと歩行者の視線をずらしてあります。ダイニングの床のレベルが高くなっているんです。歩道側の大きな窓の位置は、外部からは視認しにくくなってますが、テーブルにいるお客様からは歩道を歩く人はよく見えるんです。中庭を含め、外部空間を上手く内部に取り込んでいる計画と言えます。

 人間って、食べているモノや所を他人から見られるのって、恥ずかしいじゃないですか。少なくとも気持ちよくはないでしょ。その辺の微妙とも言える神経を大切に考えての計画なんだと私は思っています。売っているクッキーと同じように繊細さを感じるんです。反面、ウエイトレスのお姉ちゃんにとっては床の上がり下がりが面倒なはずです。それなりの注意が必要で、疲れると思うなー。社長、建て替えちゃダメですよ。

 表参道にはいくらでも、お茶やコーヒーを頂く場所がありますが、ここのヨックモックは最上級のお店です。テーブルに並ぶお菓子やコーヒー、それを囲む空間、テーブルまで持ってきてくださるウエイトレスのお姉ちゃんたちのおもてなしの対応、全て、感じいいっす。コーヒーは、お替わりOKで、そのたびにホイップしたクリームが付いてくるのも、なんとも嬉しくて、又行っちゃうんですよ。美女を連れたハゲかかったオッさんがいたら、私です。


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3/03/2010

Portofino・ベンジャミン・ウォーナー


 ポルトフィーノ (Portofino)。この名前、聞いたことあります? ないですよね。イタリア語のような語感ですが、どういう意味か、英語の辞書には載ってません。今回は、なぜか殆ど話題になっていない、ショッピング・コンプレックス(Shopping Complex、複合商業施設の意味)のご紹介です。

 建設中は「(仮称)北青山プロジェクト・ヴェロックス北青山開発」とあったように記憶してますが、今は建物の件名としては「Portofino」です。建物の前にある案内看板にも、そうあります。セントグレース大聖堂と呼ばれている結婚式場はご存じですか、その正面です。

 表参道駅のA-1出口を出たところの信号を左に曲がり、左手のクレヨン・ハウスを通り越し、ちょっと行った路地を左に入ると、左にセントグレース、その前にポルトフィーノがあります。このページの写真を見てから行けば「お〜、あったあった、ここね」と直ぐに判ります。

 竣工したのは一昨年(2007年)だったような気がします。何月だったかの記憶はありませんが、工事用の仮囲いの向こうに妙な、魚すくいの網みたいなモノがニョキニョキ出現して、楽しみにしていた建物ではありました。設計したのは、以前ここでも取り上げた「ジ・アイスバーグ・ビル」と同じ設計者、ベンジャミン・ウォーナー氏率いる、Creative Designers International (CDI)です。竣工後数年が経ちますが、未だに半分以上の店舗にテナントが入っていない状況です。私が訪れたときには新たなテナントのインテリア工事中でした。

 今回の建物は、ヒューマン・スケール(地下1階、地上2階建て)で、強烈な印象を与えないところに好感が持てます。表参道の住宅街に建つ建物として、まー都市計画法で定める法的な縛りの中でしか計画できませんので、あのような形になったのだと思います。近隣には緑も多く、それを借景するかのように、道路側には多くの緑を配置しています。変化に富んだ空間構成も楽しげな環境を造りだし、階段や手すりのデザインにも軽やかさを感じます。

 各店舗ごとにアプローチすべく計画され、共用スペースを中心に計画が立てられています。2階部分の店舗に対しても2店舗だけの共有階段になっています。構造的にどのような扱いになっているのか判りませんが、大きく2つの建物のように見えますが、4棟建てかも知れません。

 地下にアプローチする階段が都合3つ計画されていますが、主に使われるのは2つです。ペデストリアン・デッキ(公共歩廊)が1階、グランド・レベルに地下から浮かせてあります。道路やデッキから地下のショップを見せるためにデッキの断面、両サイドにテーパー(勾配)か切ってあり視界を遮らない工夫は上手いと思えます。地下に下りてみるとテーパーのおかげで陽光もより多く取り込むことができ、思ったほどの暗さを感じさせません。

 敷地面積は1,141.27平米ですから約350坪弱ですね。延べ床面積は1,670 平米(500坪ちょっと)。構造は鉄骨造で一部鉄筋コンクリート造のようです。

 外壁を木の水平ルーバーで飾ってますが、チョッと耐用年数に不安があります。既に色あせ、波打っている場所もありますが、人に優しい木の分だけ、暖かさを感じさせます。デッキの床も木を使っていますが、頻繁な補修を覚悟しての事と思います。既に部分補修した跡が見えます。

 建物の裏にも回ってみましたが、裏からは表の表情は全く想像できないくらいに面白くないモノでしたね。建築の裏は見ない方がいいみたいですが、不動産業界の裏もこの建物からは見えちゃうんです。

 建主は「ヴェロックス青山特定目的会社」と言うヴェロックス アセット マネジメント コープが設立した会社のようです。私の知識では「特定目的会社」の意味がよくわかりませんが、他のヴェロックス特定目的会社は表参道の金魚鉢「プラダ青山店」を数年前に取得してるし、そのお隣のCartier 南青山店がはいる「ザ シェルズ オブ アオヤマ」のオーナーでもあるんです。他に「ジ・アイスバーグ・ビル」を持って、ZARA 表参道店が入る「V28ビル」のオーナーでもあります。

 何だか表参道がこの会社に振り回されてるような感じがしないでもないですね。香港の不動産開発・投資会社ヴェロックス・シティ・インベストメントが大本のようです。ファンドだか証券だか知らないけど、建築を不動産としてしか見ず、単にお¥儲けに使おうとする魂胆は、建築物の裏側同様あまり見たくないですね。知らない方がよかった。

 

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HOLON L/R 團 紀彦


 「るにんせん」と言うタイトルの小説、ご存じですか? 6年前に出版され、奥田瑛二によって企画/監督され、松坂慶子主演で映画化もされました。原作は團 紀彦と言う建築家です。

 團 紀彦とは、言わずと知れた作曲家・團伊玖磨氏のご子息に当たる人です。そうです、息子は音楽家にはならず建築家になってます。オマケに小説なんか書いたりして、建築家の素養の中に文章を構成する能力が隠されて居るのかも知れません。なんてね、私も本を書いたり小説書いたりしてますけど、某文学賞で最終選考まで残りましたが、今は単なる燃えるゴミになっちゃってます。

 で、今回「るにんせん」を読んでみました。悔しいけど、すばらしい小説でした。「るにんせん」とは「流人船」であることを知りました。建築家らしい緻密な下調べに裏打ちされ、歴史上の類推の上に小説家としての推測を巧みに組み込んで一つの物語を構築しています。内容は、江戸末期の天保9年(1838年)に起きた流人による、島流し先である八丈島からの脱獄、抜け舟事件を題材としてます。伊能忠敬の測量によって制作した地図にまつわるあれこれの、推測に基づいてのストーリー展開です。歴史の断片が今に伝える「何故」を「多分こうだろう」と仮定すると、全ての謎が解けてくることがありますが、その辺のことを当時の江戸の風俗や文化のなかで小説仕立てに描いています。歴史小説の苦手な私でさえ、夢中で読んじゃいました。絶体、お薦めの小説です。タイトルは「るにんせん」(新風社)です。

 建築家・團紀彦もビッグ・ネームではあります。私も一度お会いしたことがありますが、お坊ちゃまです。團家の系譜って言うの、凄いモノがあります。曾祖父や祖父の代は三井合名会社理事長や東京帝国大学助教授、参議院議員、プリンス自動車社長、九州朝日放送会長などの肩書きだし、親戚にはブリヂストンタイヤ(現ブリヂストン)会長石橋幹一郎などがいて、政治家の鳩山家に繋がってます。自身も東京大学大学院修了後、米国イェール大学建築学部大学院を修了してます。現在は團紀彦建築設計事務所の所長、東大、東工大、慶応、昭和女子大などで講師も勤めているようです。1999年には日本建築学会賞なども受け、受賞歴も多々ある方です。私もこういう家系に生まれ、頭脳明晰だったらなー、何て思っちゃいますよね。

 今回ご紹介するビルは、このセレブリティ(Celebrity)が設計したビルです。こっちも優等生的秀作ではあります。明らかに名のある建築家の作であることが判るビルで、建築途中の「お知らせ看板」に團紀彦の名前を見つけ、完成を楽しみにしていたビルではあります。竣工は 2004 8 月で、ビル名を HOLON L/R と言います。道路側の1階には「±0(プラスマイナス・ゼロ)青山本店」とネイルサロン「Dashing DIVA」が入る(2010年3月現在は、テナント募集中で空いてます)テナントビルです。所在地は東京都港区北青山3-12-12、新しくできた紀伊国屋ビルの裏の方です。

 で、建物ですが、中庭を持つ一つの建物のように見えますが、実は2つの建物です。HOLON L/R L/R の意味は左/右ですね。両方共に鉄筋コンクリートの3階建てですが、若干L棟の方が大きくなってます。隣接する土地2人のオーナーからの依頼で設計・建設したみたいですね。抜群の相乗効果を発揮して2倍以上いい建築空間を作り出してます。竣工後は入るテナントの意向でオーニング(日除け)やピンクの袖壁などが取り付いてしまっています(今はない)が、当初の團紀彦の主張は減じてはいない印象です。

 境界を跨ぐ建築の可能性や、それぞれが独立しながら共通の中庭と連続したファサードは街並みに新たな刺激を与えています。中庭をはさんで、道路側と奥の部分の両方を一つのテナントが持ち、左右それぞれが独立しています。シンプルな造形、ファサードの連続性には非常に好感が持てます。通常ばらばらになってしまう隣接するビルの境界線に公共性を持たせ共通の中庭へのアプローチとしているのは秀逸です。中庭の右手奥にはコーヒーショップがあって、私も何度か利用してます。

 表参道界隈の裏道に建つ珠玉の建物ではあります。こういう建物が点在しているのが表参道です。メインの通りだけでなく、歩いた事のない通りに足を踏み入れると、新たな発見を経験できます。


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この原稿は、下記の人気サイト「おもてサンド」の「たてもの観察ゼミ」に紹介されたモノで、私が写真を撮り、文章を書いたモノをベースにしています。

スタジオ青山 エドワード鈴木


 私の事務所の直ぐそば非常に気になるビルが建っている。14年ほど前にここに事務所を構えるときには既にあったビルなのだが、調べてみると著名な建築家が設計した物だと知った。今このビルは無人状態で、何だか取り壊されそうなのね。今のうちに「おもサン研究所」でご紹介しておかないと、突然なくなっちゃいそうで、ご紹介しておきます。

 数年前までは美容室が入っていて、受付にいたおネーちゃんがスゲー美人だったこともあって、参考までにチョット中を見せていただいたこともある。トイレの天井が素晴らしかった記憶しかないんですけど、美容院の名前はDADA CuBiC。ビルの看板もこの名前が前面に出てますね。一時ココナッツ・ジャパン・エンターテイメントというテレビ・ゲーム制作会社が使っていたようにも思います。

 設計したのは、建築設計界ダントツのイケメン、エドワード鈴木です。「住宅の設計打合せで、あんな顔で出てこられたら、奥さんイチコロでしょ。建主として何も言えなくなっちゃうわよ」とは、かつての私の同僚女性設計者だ。

 私自信はお会いしたことはない。雑誌のページを飾っていた、格好いいコート姿の写真でしか知らない。なんつったってファッション・モデルもこなすんですから。多分両親のどちらかが外国の方だと思う。小中高の学校は東京のインターナショナル・スクールです。実は、私の息子と同じ学校なんです。PTAの会長だか何だかをやってたので、お会いすることもあるかも、なんて思ってましたが、そのチャンスはありませんでした。我が愚息は幼稚園から高校まで、13年間も通ってた男子校で、昨年卒業しましたのでもう会うチャンスはないですね。今、この学校では大規模な新築・改修工事が進んでますが、彼も参画しているようです。どんな学校になるのか楽しみではあります。

 エドワード鈴木は、この学校の後、米国のノートルダム大学とハーバード大学大学院で建築を勉強してます。年令は私より3つ上。「だから幾つなんだ」ですか? そのくらいの歳でございますよ。その後、イサム・ノグチの所に居て丹下健三都市建築設計事務所で研鑽を積んだ人です。

 このビルの竣工は18年前の1992年です。地上3階、地下2階の鉄筋コンクリート造のビルですが、チョッと見には、5階建てのようにも見えます。ファサード(道路側から見る正面)をフロスト・ガラスで覆ったダブル・スキンのビルで、フロスト・ガラスが縦に4枚(横に3枚)並んでいます。このガラスの内側に鉄筋コンクリートの壁があります。駆体から突き出したステンレスのアームでフロスト・ガラスが支えられています。

 エドワード鈴木の凄いところは、ただ見ているだけでは気付きませんが、このステンレスのアームの長さが左右で違うんです。多分、敷地の関係で建物の矩形平面計画が成立しなかったんだと思いますね。どうしてもファサードを道路境界線と平行にしたかったんじゃないですかね。そこで、出てきたのがダブル・スキンのアイデアですな。厚くて重いフロスト・ガラスをステンレスの特注アームで受けてます。アームのデザインには、かなり気を使っている跡を感じさせるし、そのアイデアは成功していますね。

 フロスト・ガラスとコンクリート駆体との間には、一部グレーチング(鋼材を格子状に組んだ溝蓋)を使ってのテラス空間ができあがっているようにも見えます。手元に図面がないので何とも言えないし、中に入ることもできない状況での想像ではありますけどね。

 オーナーがどんな人なのか想像もつかないけど、もう少し大切に使って下さらないかなー、って感じ。今まで、ご紹介しているビルの中では最も小さいと思うけど、凄くいいビルではあります。

 建っている場所は、表参道の交差点を原宿駅方面に歩くと左側にモリハナエビルがありますでしょ。そこの信号交差点を左に進むと左手にクレヨンハウス、次に結婚式場のセントグレース大聖堂があって突き当たりますが、そこの正面にあります。因みに「あっ、あったあったと思う場所の右手は、車が6台も入る個人住宅で、マンションと間違えちゃいますが、SAさんというかつてのF1レーサーのご自宅です。たまに水道ホース片手に車洗ってます。表札はありません。

 エドワード鈴木が設計したビルで最も著名な物は、渋谷警察署宇田川派出所ですね。亜鉛鉄板貼りの外壁で、先端は鏡面に仕上がっている斧みたいな交番が渋谷の街にアクセントを付けています。彼によると、あれは顔なんだそうです。抽象的この上ない顔で、見る人によって様々な連想が可能です。私には斧にしか見えないっす。建物裏側からは、素敵に銃口がのぞいています。

 エドワード鈴木。この建築家の名前は覚えておいてください。コンクリートやガラスという素材を使いながら、どこか日本を感じます。日本と西欧の両方の感性を持ち合わせる彼でなければデザインできない物を世に多く残しています。日本文化の素晴らしさを理解し、自分なりに消化し、近代建築の中に表現してます。


必ずこちらもお読み下さい。写真はまとめてここにあります。

この原稿は、下記の人気サイト「おもてサンド」「たてもの観察ゼミ」に紹介されたモノで、私が写真を撮り、文章を書いたモノをベースにしています。