3/03/2010

スタジオ青山 エドワード鈴木


 私の事務所の直ぐそば非常に気になるビルが建っている。14年ほど前にここに事務所を構えるときには既にあったビルなのだが、調べてみると著名な建築家が設計した物だと知った。今このビルは無人状態で、何だか取り壊されそうなのね。今のうちに「おもサン研究所」でご紹介しておかないと、突然なくなっちゃいそうで、ご紹介しておきます。

 数年前までは美容室が入っていて、受付にいたおネーちゃんがスゲー美人だったこともあって、参考までにチョット中を見せていただいたこともある。トイレの天井が素晴らしかった記憶しかないんですけど、美容院の名前はDADA CuBiC。ビルの看板もこの名前が前面に出てますね。一時ココナッツ・ジャパン・エンターテイメントというテレビ・ゲーム制作会社が使っていたようにも思います。

 設計したのは、建築設計界ダントツのイケメン、エドワード鈴木です。「住宅の設計打合せで、あんな顔で出てこられたら、奥さんイチコロでしょ。建主として何も言えなくなっちゃうわよ」とは、かつての私の同僚女性設計者だ。

 私自信はお会いしたことはない。雑誌のページを飾っていた、格好いいコート姿の写真でしか知らない。なんつったってファッション・モデルもこなすんですから。多分両親のどちらかが外国の方だと思う。小中高の学校は東京のインターナショナル・スクールです。実は、私の息子と同じ学校なんです。PTAの会長だか何だかをやってたので、お会いすることもあるかも、なんて思ってましたが、そのチャンスはありませんでした。我が愚息は幼稚園から高校まで、13年間も通ってた男子校で、昨年卒業しましたのでもう会うチャンスはないですね。今、この学校では大規模な新築・改修工事が進んでますが、彼も参画しているようです。どんな学校になるのか楽しみではあります。

 エドワード鈴木は、この学校の後、米国のノートルダム大学とハーバード大学大学院で建築を勉強してます。年令は私より3つ上。「だから幾つなんだ」ですか? そのくらいの歳でございますよ。その後、イサム・ノグチの所に居て丹下健三都市建築設計事務所で研鑽を積んだ人です。

 このビルの竣工は18年前の1992年です。地上3階、地下2階の鉄筋コンクリート造のビルですが、チョッと見には、5階建てのようにも見えます。ファサード(道路側から見る正面)をフロスト・ガラスで覆ったダブル・スキンのビルで、フロスト・ガラスが縦に4枚(横に3枚)並んでいます。このガラスの内側に鉄筋コンクリートの壁があります。駆体から突き出したステンレスのアームでフロスト・ガラスが支えられています。

 エドワード鈴木の凄いところは、ただ見ているだけでは気付きませんが、このステンレスのアームの長さが左右で違うんです。多分、敷地の関係で建物の矩形平面計画が成立しなかったんだと思いますね。どうしてもファサードを道路境界線と平行にしたかったんじゃないですかね。そこで、出てきたのがダブル・スキンのアイデアですな。厚くて重いフロスト・ガラスをステンレスの特注アームで受けてます。アームのデザインには、かなり気を使っている跡を感じさせるし、そのアイデアは成功していますね。

 フロスト・ガラスとコンクリート駆体との間には、一部グレーチング(鋼材を格子状に組んだ溝蓋)を使ってのテラス空間ができあがっているようにも見えます。手元に図面がないので何とも言えないし、中に入ることもできない状況での想像ではありますけどね。

 オーナーがどんな人なのか想像もつかないけど、もう少し大切に使って下さらないかなー、って感じ。今まで、ご紹介しているビルの中では最も小さいと思うけど、凄くいいビルではあります。

 建っている場所は、表参道の交差点を原宿駅方面に歩くと左側にモリハナエビルがありますでしょ。そこの信号交差点を左に進むと左手にクレヨンハウス、次に結婚式場のセントグレース大聖堂があって突き当たりますが、そこの正面にあります。因みに「あっ、あったあったと思う場所の右手は、車が6台も入る個人住宅で、マンションと間違えちゃいますが、SAさんというかつてのF1レーサーのご自宅です。たまに水道ホース片手に車洗ってます。表札はありません。

 エドワード鈴木が設計したビルで最も著名な物は、渋谷警察署宇田川派出所ですね。亜鉛鉄板貼りの外壁で、先端は鏡面に仕上がっている斧みたいな交番が渋谷の街にアクセントを付けています。彼によると、あれは顔なんだそうです。抽象的この上ない顔で、見る人によって様々な連想が可能です。私には斧にしか見えないっす。建物裏側からは、素敵に銃口がのぞいています。

 エドワード鈴木。この建築家の名前は覚えておいてください。コンクリートやガラスという素材を使いながら、どこか日本を感じます。日本と西欧の両方の感性を持ち合わせる彼でなければデザインできない物を世に多く残しています。日本文化の素晴らしさを理解し、自分なりに消化し、近代建築の中に表現してます。


必ずこちらもお読み下さい。写真はまとめてここにあります。

この原稿は、下記の人気サイト「おもてサンド」「たてもの観察ゼミ」に紹介されたモノで、私が写真を撮り、文章を書いたモノをベースにしています。




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