
今回は、新装オープンの根津美術館です。雰囲気的には、表参道の南の端っこにあって、南のピリオッドになってます。ここから直線で真っ直ぐ行くと、北のピリオッドとしての明治神宮があります。今年(2009年)の10月7日に、3年半ぶりに開館しました。以前の根津美術館では、中庭の喫茶店でお菓子とお茶を頂くのが楽しみではあったのですが、あの甘味処は未だあるのかしら。さっそく行ってみました。
お〜〜、そうか、軒下を歩かせるのね。通りの信号を渡ると、直ぐに控えめに徒歩での来館者用のエントランスが出迎えてくれます。長さ約50メートルの軒下。歩道があるにもかかわらず、わざわざ敷地内の軒下を歩道と平行に歩かせるんです。なかなかやってくれるじゃないのよ、の印象を抱かせる竹の回廊です。歩道との間には植栽としての竹林ができあがってます。一気に表参道の喧噪とは別世界に引き込んでくれます。
建物の外壁には、さらし竹と言うらしいんですけど、びっしりと直径30ミリの竹が打ち付けられています。黒の玉砂利(黒那智)の間に歩道を設け、美術館へ入る心の準備をさせてくれます。明治神宮の玉砂利を踏んでその音を聞かせ、本殿に向かうまでの演出と通じるところがあります。
設計したのは、誰だっけ。クマさん、隈健吾です。表参道交差点の『ONE 表参道』をやった人です。随分と印象の違うビルを設計したモンだ、とも思えちゃいますね。今回は和風を感じさせるじゃないですか。庭の甘味喫茶は未だあるのかなー、とそっちの方も気になったりして。軒先の処理も思い切ってますね。樋がないもん。そのまま雨水は流しちゃうのね。その雨水を受けるドブが玉砂利の下に隠されています。
切り妻の大屋根に降った雨が一気に軒先から落ちるのってどんな感じだろう。今度、雨の日に見に来なきゃ。亜鉛メッキされた梁が表しで軒を支えてます。ディテールはきれいですね。ここまでは実に繊細な設えになっています。なかなかいいんじゃないの。庭が壊されてて、甘味喫茶が無くなってたら、ただじゃおかないからね、と左に曲がって建物入り口です。
ん〜〜ん、エントランスを入ると直ぐ左手に大ホールが待ち受けています。これだけのボリュームの空間を大屋根が覆っていると、どうしても暗さを感じちゃいますね。庭に開いたガラス窓だけでは少々暗い。照明が不足なのかしら。右手側には、ミュージアム・ショップがあって、人でごった返していました。
東武鉄道の社長なんかしてた根津嘉一郎(1860~1940)がお¥に糸目をつけずに集めた自慢のコレクションが、ホールの壁や窓を背に並んでます。日本や東洋の古美術品だ。この辺の素養のない私は、並んでいるモノよりもインテリアの仕上げの方が気になっちゃいます。
床は断面詳細図(日経アーキテクチャー、2009-10-26 号)には「コーラルグレー t=30 」とありますね。商品名だと思うけど、コーラル(coral)の意味は珊瑚でしょ。何なんだろう、よく判らないけど、壁にも同じモノが使われてますね。天井は「PB t=9.5 ダイライト t=6 竹練り付け」となってます。PB(プラスターボード)やダイライト(大建工業の建材、商品名)は建材としてはよく使うモノですけど「竹練り付け」とありますなー。写真にも撮ってありますけど、竹を薄くスライスしてそれをダイライトに練り付けてるのね。内部にも和を醸し出して、根津さんのコレクションを展示する空間には持って来いの仕上げだと思います。
私は展示品には全く興味がないので、展示室には一歩足を踏み入れただけで戻ってきました。入ったところで、私と同年代のオバ様ばかりがウジャウジャいます。暗いので写真も撮れないし、今日はいいや、と言うこと。これじゃー、外の甘味処もオバちゃん連中に占拠されてて入れないな、とここで諦めました。
根津美術館の魅力はお庭とも言えるのですが、坂あり、池あり、いくつものお茶室ありで、多くの木々の中に結構密度濃くて、開放的な雰囲気はありません。広いと言えば広いのですが、狭く感じちゃいます。南青山にこれだけの庭を維持していた根津ファミリーの凄さは感じますが、美術品の趣味趣向や空間の味わいなど、私の感性と重ならない所が大きいような気がしちゃうんです。ダメだとか、悪いとかじゃないんですよ。いいんですけど、私は以前あったお庭の小さな甘味処でお茶が頂ければ、それで十分なんです。
でお庭です。写真の通りのモノがあります。新美術館の大屋根切り妻が美しいのですが、お茶室の屋根の連なりに、今回の屋根のデザイン・ヒントを見つけたんじゃないでしょうか。日本建築では多々あるデザインですが、上手く現代風にアレンジしてます。多様している竹についても、日本古来の使われ方を参考にしてますね。
お庭の甘味処は、やっぱ、大量のオバサン方で溢れてました。オバサン方にも加齢臭ってあるんですね。以前の甘味茶屋の趣は吹っ飛んでました。本来のクマさんを感じさせるデザインで、茶屋とは言えない、NEZU CAFÉ として、かなり大きな空間が出現してました。新館とはデザイン・コンセプトも、何もかも違った建物でした。混沌の日本庭園に新たな混沌ができあがっちゃってました。私は、あの、壊れそうな感じさえした、古びた小さな汚い建物で良かったのに、なんとなく淋しい感じ。
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