6/19/2010

SIA青山ビルディング 青木淳

 「白い巨塔」って感じが、私の第一印象かしら。「子供の城」の角を曲がると直ぐに「何?あれ」の、白い巨大なロールケーキが正面に見えてきます。

 そんな美味しそうな塔が20084月に、表参道にオープンしました。「SIA青山ビルディング」です。1.15m2.2mを一辺とする7種類の正方形の窓が一見無秩序に並んでいるような感じで、建物のコーナーが丸く収められていて、柔らかな印象を与えます。外からは何階建てなのかは判らない、オフィースだかマンションだかも判らないビルですが、各フロアーに上下2段の窓がある注目すべき高層賃貸オフィス・ビルです。

 ビルのオーナーは、ビル名にもあるSIA(シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズ)で不動産開発事業などを手掛ける投資会社ですね。お金持ちが持っている余剰資金を集めてビルを建て、人に貸して設けようとする会社みたいなモンかしら。まー金融資本主義の世の中ですから、お¥を使ってお¥を儲ける事を考える会社がオーナーであってもいいですけどね。

 高さ64mです。普通ですと20階を超える建物になっても不思議ではないのですが、このビルは、なんと、この高さで9階建てです。そう、それぞれの階の天井高が異常に高く、4.9mもあるんです。普通の住宅の天井高は2.4mですから、倍以上ですね。因みに階高は6.4mだそうです。中に入るチャンスはありませんでしたが、いいか悪いかは別として、かなり異質な事務所空間だと思います。現在はアパレルメーカーのサンエー・インターナショナルが東京本社として一括で借り上げているようです。

 この場所は、都市計画法上は商業地域であって、建蔽率80%、容積率500%の所なのね。建物の高さを制限する高度地域の指定は無いところで、容積500%以内であれば、高さはいくら高くてもいいよ、という場所なのよ。その他に、日影規制と言うのがあって近隣に何時間以上影ができないようにね、と言う面倒な規制はあるんだけど、建物を細長くすれば、影が当たる時間は短くできるのね。

 このビルの計画のしかたは、その辺の法の盲点を突いてますね。床面積で計算する法定容積率はほぼ目一杯を使ってます。建蔽率は余裕を持って、許容される80%の内46%弱しか使ってなくて、建物を細長く塔状に計画してるのね。普通に考えるとあの場所にはあんなに高いモノは建たないのよ。法的なやり方としては上手く逃げたな、って印象なんです。

 構造は、鉄筋コンクリートの壁構造で、これもオフィースビルとしては珍しい。平面的にも矩形ではありません。変則の5角形です。それぞれの角にはアールを付け、ビルの立面には角がないように設計されてます。この建物には、柱や梁はないんですよ。外壁がそのまま構造体なんですけど、免震構造の細工が施されてるみたいで、通常の耐震構造ではもの凄く厚いコンクリートの壁になっちゃいますけど、免震構造だからそれほどの厚さにはなってないのよね。とは言っても1階部分での壁厚は500ミリにもなってます。施工は鹿島建設がやってますが、構造設計はどこがやったのかは不明です。

 もう一つ、不思議なことがこの建物にはあります。それは、目地が一本もないんです。雨水の浸入を防ぐ為にも、コンクリートを打ち継ぐ所には必ず目地を入れますが、このビルにはありません。地震などで揺れたときにはコンクリートには必ずクラック(ひび割れ)が生じます。このクラックを一カ所に集中させて他の面を守ると言う意味のクラック誘発目地を一定間隔で入れておくのですが、それもありません。外壁の表面が実に綺麗にのっぺりしているのは、そのためです。妙な縦横の線が入ってないでしょ。ロールケーキみたいな外壁で、何階建てだか分かんなくしているのは、そのためもありますね。

 あと心配なのは、窓の両端から流れ出る汚れた雨水の跡が今後出てこないかの不安です。外壁に塗布されている塗料がなんなのか判りませんが、最近の塗料の中にはかかる雨水で自動洗浄するようなモノまであるみたいですけど、築後5年ほど経つと汚れてくるんじゃないかしら、判らないけど。だとしたら白いロールケーキの巨塔も見るも無惨な姿に落ちぶれちゃいますので、メンテナンスには十分なお¥を掛けてくださらないと、折角の美味しそうなビルが台無しになっちゃいます。

 ところで、設計したのは青木淳です。表参道はじめ、銀座、六本木などのルイ・ヴィトンの店舗設計を多く手がけています。東京大学大学院修士課程 (建築学) を修了後、磯崎新アトリエにいて、1991年に独立、青木淳建築計画事務所を開設した後、潟博物館(1997)で日本建築学会作品賞の受賞を始め、数々の受賞歴があります。このSIA青山ビルディングで、2008年度グッドデザイン金賞も射止めています。

 青木淳は雑誌「新建築」(2008年6月号)で、このビルについて下記のように書いています。「機能的な充足を与えることは、普段日常とかわりはない。そして、標準解を基本にして、ただし、その空間と機能と距離を広げる。普段日常にあらがわない。普段日常のちょっとだけ先にあるはずの、ガラッと位相を変えた現実」。途中の抜粋で申し訳ないけど、私はバカなせいか何を言っているのか、さっぱり判らないのよ。師事した磯崎新と似たような文章で、英文に翻訳できない日本語でさ。もうちょっと判りやすい日本語で説明してくださらないかしらねー。




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この原稿は、下記の人気サイト「おもてサンド」の「たてもの観察ゼミ」に紹介されたモノで、私が写真を撮り、文章を書いたモノをベースにしています。


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