メトロサ 北河原温
っと〜、ここにあったのか〜、と偶然見つけた「メトロサ」である。私の事務所から歩いて直ぐの所。表参道の路地裏に隠れ建つ超有名建築。以前から気にはなっていたのだがどこに建っているのか判らないでいた。
知的にぶっ飛んでるデザインが、北河原温(きたがわら あつし)の建築ではある。表参道界隈に林立する他の建物を凌駕する高度なデザイン性を惜しげもなく主張し、威光を放っている。雑誌でしか知らなかった形が見えた。コンポジション(構成)が素晴らしく美しい。建築は3次元空間に建ち、写真に撮ったんではこの素晴らしさは全て消えてしまうように思った。
この集合住宅の設計者、北河原温は現代建築界の巨匠と言える人だと私は考えている。建築を芸術としてとらえることの出来る数少ない建築家である。一般的には「妙なデザイン」と受け取られがちではあるが、単なる妙ではない。気品と共に不軌の挑戦的な姿勢を醸し出す。「どうだ、文句あるか」のデザインに反論の余地はない。
皆さんが知っている彼の作品は、渋谷のスペイン坂にあります。ライズという、映画館が入るビルでスペイン坂の上で尖っているやつです。実に妙な意匠で、いつまで経っても工事中みたいなあれがそうです。他に、表参道にはアルス・ギャラリーという真っ白な建物があって、近々このページでご紹介する予定ではいます。
彼自身のホームページに「メトロサは東京・神宮前(表参道)の良好な住宅環境の中にあって比較的小規模の典型的なロフトタイプの集合住宅です。天井を貼らずにコンクリートをそのままインテリアとして生かし、吹抜けのあるメゾネットの立体的な構成や高いドア、スケールの大きなサッシなどによってとてもゆったりとした空間の拡がりが感じられます」とあります。残念ながら内部を見ることは出来ません。集合住宅ではありますが、小さなデザイン事務所がいくつか入っているようで、人や家族の生活感は全く感じない建物です。
あれだけ沢山の素材を使いながらもパーフェクトな統一感を見せている所に驚かされます。平面的になりがちな立面が、奥行きのある空間としてのダイナミズムを静かに表現しています。素材の違い、テクスチャーの違い、色の違い、を巧みに操作しています。私のような凡人に出来るデザインではありません。建築の設計を少しでも経験した人なら、この建物の非凡なる凄さが判ります。この建物を見て、興奮しないアナタは建築の素人さんです。少しでもスゲーなーと感じるアナタは建築的素養を身につけている人です。
中庭が造られていています。ステンレス・プレートの垣根の間から、無遠慮にのぞき込み、カメラも向けましたが、地下2階に位置する中庭の床にもステンレス・プレートが敷かれていました。通常であれば奈落の底のような印象を持ちそうな地下2階の中庭ではありますが、地下にまで下ろされた白いテント・スクリーンが光を反射し、暗い印象はありません。敷地面積339㎡(約103坪)に建つ、地上2階、地下2階建ての中規模な鉄筋コンクリート造の集合住宅(総戸数12戸、たぶん)で、竣工したのは1989年です。北河原温はこの建物で、1991年・日本建築家協会新人賞を受賞しています。
東京芸大在学中に国際設計コンペに入賞するなど、若い頃から国内外を問わず活躍している建築家です。現在は、北河原温建築都市研究所を主宰し、東京とベルリンに事務所を持ち、東京芸術大学大学院の教授でもあります。最近では、山梨県の小淵沢に2007年に竣工した、寓意の森を表現したという「中村キース・ヘリング美術館」で、日本建築大賞を受賞しています。
皆さん、是非、見に行ってください。表参道に建つ珠玉の建築です。この建物だけを見に、表参道に来る価値がある建物です。ただし、一発でこの建物の前には来られないと覚悟してください。必ず迷います。あのホモっぽいオカマキャラで知られる假屋崎省吾さんのハレンチな邸宅や、歌手の小田和正さんの家(実家?ここで何度か本人を見ました)なんかが点在する付近です。この辺の道路は素直に配置されていませんし、車ですと一方通行ばかりです。曲がりきらないような路地が沢山あります。住所は、渋谷区神宮前5-40-10ですが、グーグルのストリート・ビューを見ると改修工事中の仮り囲いで見えていません。
この原稿は、下記の人気サイト「おもてサンド」の「たてもの観察ゼミ」に紹介されたモノで、私が写真を撮り、文章を書いたモノをベースにしています。
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